ダイエット食品

   翡翠二人?
     Written by 旅人



「志貴サマ、イカガデショウ…?」

「うん、美味しいよ」

 少し嬉しそうに顔を崩す翡翠………いや、メカ翡翠。
 本当の翡翠があそこまで微笑むには…………もう少し時間が掛かるかもしれない。

「あの、兄さん。  何で翡す……いえ、メカ翡翠が?」

 秋葉がテーブルの向こうでナイフとフォークを持ちながら聞いて来る。
 ちょっと皿がカチカチなってるのが耳障りかな。
 あと、秋葉の髪が心持ち紅く染まってきてるような気もしなくもない。

「あれ、秋葉がメカ翡翠を導入したんじゃないの?」

 てっきり、琥珀さんと翡翠の2人だけだと大変だからって理由で秋葉が許可したものだと……。

 秋葉は後ろに立っている琥珀を睨みつけ、それにつられるように俺と翡翠も琥珀さんを見る。

「ありゃ〜、バレちゃいましたね〜。
 本当は秋葉様がご就寝中に洗の……いえいえ、ちょっと細工をしようかと思ってたんですけど。
 でも、志貴さんは良かったじゃないですか。
 さっきはメカ翡翠ちゃんに良いことしてもらったんでしょ?」

 琥珀さんがあえて秋葉と翡翠が勘違いするような事を口走った。


   〜〜志貴が学校から帰ってきた頃〜〜

 夏は暑い。
 そんなのは分かりきっている事なのに元気(?)に戦っているアエルクェイドとシエル先輩を止めて、
 次の瞬間にはシオンとの戦いも止めて。
 止めたら止めたで「志貴ぃ〜」なんて言ってくっ付いて来るアルクェイド、
 それを止めようとするシエル先輩。
 2人がバタバタやってる間にいつの間にかくっ付いてるシオン。

 コレを振り切るには3人から逃げるしかないわけで、逃げるには走らなきゃいけない訳で……。
 とにかく遠野家の前の坂を全速力で駆け上がって屋敷の中に入った。

「はぁ、はぁ……はぁ」

「お帰りなさいませ……」

 膝に手を付いて息を整えていたらメイド服が目に入った。

「た、ただいま……翡翠。
 ちょ、ちょっと、シャワー、浴びるから……着替え、よろしく」

 翡翠の返事も待たずに浴場の方へと向かう。
 部屋に行ったらアルクと先輩が先回りしてた、なんて事になってるかもしれないから。

 ウプッ、走りすぎて気持ち悪いかもしれない。
 お陰で少し俯き気味に歩いていった。


  シャワァァーーー……


 少し冷たい位のシャワーを浴びて、さぁ部屋へ………って、あれ?

「着替え、無いよ?」

 それどころか、バスタオルも無い。
 バスタオルは頼んで無いけど、着替えはさっき翡翠に……


   ガチャ……


 扉が開く音によって考えが中断させられた。

「ひす……ぃ……?」

「ピピ……志貴…サマ……」

 メカ翡翠が入ってきたのだ。

「な、何でメカ翡翠がココに!?」

 琥珀さんが作ったロボットで、以前に襲われた記憶が甦る。
 が、文字通り丸腰の自分には戦う術が無い。

「志貴サマガ、着替エ、持ッテ来ルヨウニト……」

 片言ながらメカ翡翠がそう答える。
 そういえば手にはバスタオルと着替えが……。

「あ〜、有難う。
 そこに置いたら仕事に戻ってくれてもかまわないよ」

 メカ翡翠に仕事があるのかどうか分からないけど、いつも翡翠に答えるように返す。

「イエ、志貴サマノ着替エ、手伝イ、シマス」

 そう言うと、タオルで体を拭いてた俺からタオルを取り、コシコシと水滴を拭い始めたのだ。

「わっ、こ、コラ、いいって、自分でやるから」

 言ってみるも、全く聞く気が無い様子のメカ翡翠。
 体を拭き終わると、続いて着替えに移るようだ。
 流石にメカとはいえ、恥ずかしい。

「ココからは自分でやるからいいよ」

「イエ、ダイジョウブデス」

 手にメカ翡翠は手にパンツを持って近づいてきた。

「志貴サマ、足ヲ、オアゲ……下………サ…………」

 メカ翡翠は一点を見つめたままフリーズしていた。

「静かにならないでくれっ!頼むから!
 色々と不安になるからっ!!」

 その後、回復したメカ翡翠によって全て着替えをさせられてしまった。
 メカも顔赤くするんだなぁ〜、とか思いつつ。


   〜〜現在〜〜

「志貴さん、翡翠ちゃんとメカ翡翠ちゃんの二人の翡翠ちゃんにお付きをしてもらって幸せですね〜」

 ヒューヒューと口笛を鳴らす琥珀さん。

「いや、あの、確かに嬉しいんだけど……」

「じゃぁ、今夜はダブル翡翠ちゃんで組んず解れつですね!?」

「いや、そうと決まった訳じゃ……」

「良かったわね、翡翠ちゃん!」

 琥珀さん、勝手に話を進めないで下さい。
 そして翡翠も、嬉しそうに頬を染めない!」

「志貴サマ、ヨロシク、オネガイシマス」

「普通に返事しないっ!」

 この日の夜は、まんまと琥珀さんの計画に嵌ってしまったのだった。



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