2.肩越しに触れる
Written by 旅人
じーわじーわ……みーんみんみん………
外では夏の風物詩であるさまざまなセミたちが声をはりあげて鳴いている。
室内に居るとそれらの声は多少くぐもってはいるが、相変わらず聞こえてくる。
そんな中、真昼間からイスだけが置いてある誰も居ない部屋を掃除している俺は何なんだろう。
「ったく、始まる前なら分かるが、真っ最中に掃除させるかよ。
仮にも病院だろ」
モップで床をゴシゴシしながら思ったことを愚痴ってみる。
「っと、イスの下もゴシゴシっとな」
しゃがみ込んでモップを寝かせ、長イスの下も拭き拭き。
そしてそれが終わるとモップをバケツまで持っていき、ザブザブと洗う。
しゃがみ作業だったため少々腰が疲れた。
体を腰から後ろに倒してバキバキ腰を鳴らす。
「国崎くん、待合室の掃除は終わったか?」
その声は待合室と診察室をつなぐ出入り口のところから聞こえてきた。
そちらへ目を向けると、声の主である霧島 聖が壁にもたれかかって立っている。
「あぁ、上から下までキレイに掃除したぞ」
さっきの愚痴が聞こえてないかとか、ちょっとばかしヒヤヒヤ。
「うむ、ご苦労」
対する聖はというと、待合室に一周グルリと目をやると、そのまま俺にロックオン。
なんか良く無い気配を感じる…。
「さて、国崎くん」
コレで掃除は終わりだよな?
約束ではもう一つ掃除するなんて聞いてないし。
「こっちも頼むぞ、国崎くん」
「って、ちょっと待て!聞いて無いぞ、そんなこと!」
俺がそう言うと聖は「何を言ってるんだ国崎くんは」とでも言いたそうな目で見t
「何を言ってるんだ国崎くんは」
口にも出しやがった。
「確かに他の部屋の掃除も頼むとは先に言って無いが、この部屋だけとも言ってなかったはずだが?」
ぐっ、確かに言われてない。
しかし、無償で掃除してやるほど俺は安くな
「もちろん礼は弾む」
「さぁ、どこの部屋だ?」
掃除決定。
ゴシゴシ
「国崎くんは気にしないで進めてくれ」
俺が今掃除しているのは診察室。
聖はというと、今デスクで何かを書いている。
さっきちらっと見たが何語かすら分からない。
ふむ、ちゃんと医者はやっているようだ。
ふとデスクの上の手先から聖に視線が。
真面目に仕事をしている姿は惹かれるものがあった。
「なぁ、聖」
「ん、どうした国崎くん」
聖はデスク上の書類から動かさずに答える。
「さっきの礼っての、何でも良いか?」
「あぁ、良いがあまりたくさんは食わせれんぞ。それと金もなしだ」
確かに俺なら「飯をたくさんくれ」というのも有りそうだが、違う。
「あぁ、大丈夫だ」
「そうか、言ってみてくれ」
相変わらず書類から目を離さない。
俺はそんな聖の後ろに立って……
「聖、後ろ」
名前を呼ぶ。
「ん?」
そして、振り向いた聖の唇に肩越しに俺のそれを当てる。
「………………っ!?」
数瞬の後、聖の顔に紅みと驚きが表れる。
それが限界になろう頃、互いの唇は離れ、俺は再び掃除に戻る。
「聖、礼がこれで良ければまたいつでも掃除してやるぞ」
そう言い終わった俺は、次の瞬間ベッドにいた。
そして、聖が俺めがけて………。
追伸:その後も聖は何度か診療所の掃除を頼んできた。もちろん礼は同じで………。
Fin.
※※※あとがき※※※
はい。
なに気にこのサイト初めてのAIRのSSです。
いやまぁ、AIRをやったのが結構前なんで聖さんのキャラとか意外と忘れちゃってたなぁとか思うわけですよ。
なんで、この聖さんも全然別人になっちゃってるかもですね。
では、他の小説で逢いましょう。
こんな小説ですが、読んでくださって有難う御座いました。
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