1.ご挨拶
Written by 旅人
「志貴ぃ〜」
学校から帰って来て遠野家の門を開けると同時に横の方から声が聞こえてきた。
声のする方を向くと、少し離れたところでアルクェイドが笑顔で手を振っていた。
「お帰り、志貴」
アルクェイドはタタッと駆け寄って来る。
そして、隣に来ると同時に顔をスッと近づけて俺の唇を奪う。
「え、なっ……へぇ?」
いきなりの事に驚いて、気の抜けた様な声しか出ない俺。
「どうしたの?志貴」
驚いてる俺を見てアルクェイドは、俺が何に驚いているのかすら判らない様子。
「あの、何でいきなり?」
「キスって、挨拶の代わりにやる物じゃないの?」
あれ?とでも言いたそうなアルクェイド。
「そんなのどこで覚えて……?」
「他の国とか?」
アルクェイドに言われて気が付いた。
そういえば、こいつは使徒を追いかけて世界中歩き回ってたんだった。
だから日本以外のコミュニケーションのとり方とかも知ってて当然か。
「いや、それは日本以外の国でのことであって、日本でいきなりそれをやられると……」
「いや?」
「イヤじゃないけど……」
「なら良いじゃない」
よろしい、とばかりに微笑んでくる。
「日本の人って、何でこーゆー事しないのかな?」
「なん?」
「キスとか。
挨拶代わりに、とかしないでしょ?」
「あ、あ〜……それは文化とかの問題もあるし……」
「それは昔から皆がやってるかやってないかの違いじゃない」
「それに、その……」
「それに?」
「その、キスは、神聖……というか、好きな人とだけやりたいもの……なんじゃないのかな、たぶん」
「………好きな人、ねぇ」
ふ〜ん、と納得してるようなしてないような感じのアルクェイド。
そんなアルクェイドの頬に自分の唇を軽く触れさせる。
「え……志貴?」
「こ、コレは、さっきのお礼だ……その……キスの……」
頬から熱を感じる。
他人が見たら多分、林檎のように赤くなってるんだろう。
「そして………」
アルクェイドの頬に両手を添え、固定&軽く引き寄せると、その柔らかそうな色艶の良い唇に自分のそれを重ねる。
アルクェイドは驚いた表情をしたが、それは一瞬で終わり、次の瞬間には嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「こ、これが、さっきの説明のやつだ……」
そう言うと俺はクルリと屋敷の方に身体を向け歩き出した。
「あ、志貴、まってよ〜」
すぐに追いついて身体にくっ付いてくるアルクェイド。
こいつとなら挨拶としてキスしても良いかな、と思ったある日の話。
Fin.
※※※あとがき※※※
はいはい、月姫で作りました、アルクェイドのお話しです。
ちょいと短くなっちゃいました。
本当はもう少しキャラクターを出そうかとも思ったんですけど、あまり人数を出しても
私の力量では動かしきれない可能性があるので、そんなことよりは、と思って出しませんでした。
この小説は、ノリと勢いで構成されていますんでヨロシクッ!
こんな小説ですが、読んでくださって有難う御座いました。
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