Runnaway ver.KEY ACT.5
     作者:DJ EVO



注意: この物語はフィクションです。
なので、登場人物たちがする行為を真似をして他人に迷惑をかけないようお願い致します。
実際の道路では、道路交通法を守り安全で楽しいカーライフをお楽しみ下さい。
キャラのイメージと車が一致しないかもしれませんが広い心でお読み下さい。


ACT.5

まだ肌寒い早朝にわざわざ走りに来るのは、地元でも珍しい。
この二人にとってはいたって普通なのだが…。
二人の女性。沢渡真琴と天野美汐のコンビ。コンビというと不思議な感じだが、いつも二人一緒に行動するので
コンビのようなものだ。乗っている車も同じ車種だ。
真琴はトヨタEP91スターレット グランツァV。黄金色にオールペイントされてある。
美汐の方はトヨタEP82スターレット ソレイユ。色は地味なネイビーだ。
明らかに乗り手の性格の違いが現れている。真琴はターボで美汐はNA。
じゃじゃ馬のようなスターレットターボはまさに真琴そのものだし、あえて大人しいNAにする所は、美汐らしい選択。

「最初は真琴が私の後ろについてきて、次は私が真琴の後ろにつきますから」
「うん、分かった」
「いつも通りタイヤを暖めてから始めますよ。あまりムキになっちゃ駄目ですからね」
「美汐は同じ事何回も言わないでよ〜心配しなくても大丈夫だから!!」
「念のためです。じゃあ、行きますよ」

そう言うと二人はそれぞれの車に乗り込み、裏コースへと走り出す。いつも二人が練習しているのは裏コースの方。
軽量コンパクトなスターレットの利点を生かすにはもってこいな裏コース。昼でさえほとんど車が通らない道
なので、朝方は全くといっていいほど車は通らないから安心して走れるのだ。

二台は何個かのコーナーを抜け、タイヤを温める。前にいる美汐がハザードを消す。二人の間ではタイヤが温まる
まではハザードを焚いておくという決まりがある、消すときはスタートするという事なのだ。
と同時に美汐のスターレットは甲高い音を出し、一気にスピードを上げる。それに続いて真琴がブーストを目一杯
かけて美汐を追いかける。

「練習の成果がどれほどのものなのか楽しみですね…。」
美汐はボソっと一人言を言い、表情が変える。どこか子を見守る母のような母性に満ち溢れている。

400Mくらいの直線の次に待っていたのは、変則的な複合コーナーが続く区間に入る。序盤は比較的見通しはきくが、
この中盤区間はブラインドコーナーに加え、周りの木々が光を遮り昼でもライトを点けなければならないほどの
暗さ、さらには道幅、コーナーのR、路面状態がめまぐるしく変わる区間だ。普通じゃ考えられないようなここの区間
をいかに速く抜けられるかが勝負を決めると言っても過言ではない。
終盤は序盤と同じような感じのコースレイアウト。ただ、道幅は序盤より狭くなっているため、抜けるポイントは
ほとんどないに等しい。バトルの場合は必然的に先行後追い方式になってしまう。どちらかが離れれば負けという事だ。

「今日は絶対に最後までついていくんだから!!」

真琴がそういきり立つ理由。それは、まだ美汐に最後までついていけていないからだ。最初に美汐と走った時には
コースの半分もついていけなかった。それから美汐についていこうと決めて練習を始めたのだが、いつになっても
一向についていけない…。
そんな時だった、祐一がある提案を出してきたのは…。

半年前………秋も終わりに差し掛かる頃


今日も賑わっている峠。駐車場にいる真琴を見つけて、祐一は声をかけてみた。
「おう!元気か、このやろう!!」
「今日初めて会って、それは無いでしょッ!!」
「まあ、細かい事気にするな」
「細かくないよ!で、なに。またなんか企んでいるでしょ?」
「そんなことは無いっての!それでどうだ、上手くなったか?」
「えっあっううん…。全然だめ…。美汐にまだ半分しかついていけないの……。どうしたらいいのかなぁ?」
急にしゅんとしてしまった真琴を見て、祐一はしばらく考えた末、ある事を思いついた。
「よし!決めた!!お前、明日10時頃、北川の家に来い。いいもんやるよ」
「エッ!ナニナニ!?イイ物って!!」
「明日までのお楽しみだ。忘れずに来いよ」
「うん!分かった!!」


次の日、北川の家に三人が集まり、ガレージの前にいる。

「で、なにくれるの?いいものってなに?」
「それはな…。フッフッフッ、これだーーーーっ!!!」
祐一がガレージを開けると、そこには…。
「えーーーーーーっ!!!!!」
真琴の悲鳴が周りに響き渡る。何か見てはいけない物を見てしまったような反応だ。
「オーそんなに嬉しいか、良かったな〜北川」
「うんうん、良い事をしたな〜お役に立てて光栄だ」
二人は満足気だが、真琴はそうではない様子。
「あんた達!何よこの車は!!こんなボロっちい車は!!!」
大量のつばが二人の顔にかかる。
「のわっ!つばを飛ばすな、つばを!!汚ねーな」
「こんな車欲しい訳ないでしょ!大体走るのこれ?」

真琴がそこまでして嫌がる車は、黒のトヨタKP61スターレットSi。ボディは所々凹んでおり、バンパーは擦れて
塗装が剥げ、お世辞にも綺麗とは言えない。

「失礼な!北川と俺が手塩にかけて仕上げた車だぞ!!しかもだ、お前の乗っている車の大先輩だ。言葉を慎めい!!!」
「ボロはボロでしょ!こんなオンボロ車乗りたくないよ!!」
「まあまあ、二人とも落ち着いて。外見はこんなんだけど、中はそれなりに綺麗だから」

そう言われ、渋々、中を見る。ドアを開くとそこには、ロールゲージのサイドバーが乗る時に邪魔する。
シートはフルバケットシートが二脚しかなく、リヤシートがあった場所には消火器や工具が置かれており、
剥き出しになっている内装は丁寧に黒く塗られてあるので汚いという印象はないが、やはり古さは隠せない。

「しばらく、これで練習だ。こいつはお前の車とは違ってFRだから注意しろよ。」
「FRって何?ていうか練習って何よ」
「お前そんな事も分からないのかよ!FRはフロントエンジン・リヤドライブの略。要は後輪駆動だ。そしてお前は
これからこの車にしか乗るなよ。」
「へぇ〜そうなんだぁ〜、祐一頭良い!!って、ちょっと待ってよ〜勝手に決めないでよ〜」
「誉めても喚いても何も出んぞ。それにだ、美汐に追いつきたいんならこの車で練習しないと駄目だ!」
「む〜〜〜分かった………。」
頬を膨らませ、唇を尖らせる。まだまだ子供だ。
「そうそう、ちなみにエンジンはキャブレターだから、天気によって走らない時があるから気をつけてね。
本当だったらインジェクションにするべきなんだけど、突然だったからさ、交換する暇なかったんだよね。しばらく
はそれで我慢してちょうだい」
「もし、なんかあったら俺か、北川のいるショップに連絡すればいいさ。EP91は練習が終わるまではウチのガレージに
置いておけばオッケーだ。秋子さんには、もう了承を得てあるから心配するな。あと車の音うるさいから美汐の家に
帰るときは、抑え目にしていけよ」
「じゃあ、真琴の車にはもう乗れないの?」
泣きながら祐一にすがりつく。
「そうじゃない、一時的に乗れなくなるだけだ。お前が美汐についていけるようになれば、また乗れるようになるから
心配するな」
「グスン……。分かった………」

泣いてしまったせいだろう。真琴の目が少し赤くなってしまっているようだ。厳しいことを言ってしまったかなと
可哀想になったが、これも真琴の為を思ってやった事だからしょうがないと祐一は心の中で思った。

「おい、泣くな!!打倒・美汐だ!!せーの、オーーーーーッ!!!」
「オーーーーッ!!美汐、負けないんだから!!!」
「じゃあ、出発進行!!」
「イケ―ッ!オンボロ車!!」
「オンボロ言うなっ!!!」
「本当に大丈夫かな…。心配になってきたなぁ。はぁ〜〜〜」





あとがき


えーっと、なんか真琴の話になっちゃってますが、決して真琴が好きだからという理由ではありません。ハイ。
本当です。単にKP61を出したかったとか、そんな安易な理由じゃないッスよ!あははは…。趣味丸出しじゃん(汗)
ゴホンッゴホンッ、えーっとそれでは失礼します。